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甘えたいの


特に何も語るまい。
唐突に投下。


【困らせたいの】の続編だったりする。









冷えきっていた指先に体温が戻ってくる。
凍えてしまいそうだった胸の中も、今では、ほんわりと温かかった。

こうして、レニの腕に包みこまれてると、いつも思う。

幸せ。

ただ触れ合っているだけなのに、それが何よりも嬉しい。
そう思える人はレニ、ただ1人だけ。
私にとって、絶対不可欠な存在なのだと再確認して、頬が緩む。
広い胸に擦り寄り、しがみつく指に力がこもる。
さっきよりも近くにレニを感じて、不安だった心が落ち着きを取り戻していた。


「少しは機嫌が直ったみたいだな。」

頭のてっぺんから、安堵と疲れが入り混じった声が落ちてくる。
素直に頷きたいと思うと同時に、そう思うことがなぜだか癪に障った。
レニの胸に埋めたままの顔を引き締め、少し不機嫌そうな表情をつくって、顔を上げる。

「まだまだだもん。ぜんぜん足りない。」

困って揺らぐレニの瞳が可愛らしくて、口元が緩みそうになる。
どんな我儘を言っても、この手は離れない。
わかっているから、イジワルをしてしまう。
レニが困って悩む姿を見る度に、自分の中に隠されていた本能が刺激される。
クスリとほくそ笑む自分は、確かに悪魔なのだ。
誰にも関心がなかったレニが唯一執着するのは自分だけ。
私だけが特別だという優越感が心地よい。

のんびりと優越感に浸っている私の前では、レニが困り果てた表情で悩みこんでいた。
このまま放っておけば、もっと落ち込んでしまいそうで、さすがに可哀相になる。
「仕方ないな。」と口の中で呟くと、いきなり抱きついた。
しっかりと私の背中に腕を回しながらも、跳ね上がった体からレニの動揺が伝わってくる。
レニの耳元に唇を寄せると、クスリと声を出して笑い、楽しげに言葉を続けた。

「う・そ。
機嫌は直ってるよ。」

大きな安堵の溜息とともに、緊張していたレニの体からゆっくりと力が抜けていくのがわかる。


「でも、レニが足りないのは本当だよ。」

途端に、息を呑む声が聞こえ、またレニの体に緊張が走る。
体を離して、顔を見ると、真意を図りかねているのが見てとれた。
クスリとまた笑うと、レニはようやく気がついた顔をしたが、怒るに怒れず、恨みがましい目を向ける。

「いじわるだ。」

「我儘言うって言ったでしょ。」

「俺を困らせて、おもしろがっているだけだろう。」

「だって、困ったレニの顔が可愛くてずっと見ていたかったの。」

「…!?……かわ………」

おおよそレニの印象からは程遠い言葉に、目を剥いて絶句している。
きっと、私以外には、誰にも言われたことがないんだろうなと思うと嬉しくなった。

「レニ、可愛い!!」

「っ!?…言うな!!」

「なんで?可愛いのに。」

「可愛くない!!」

「え~っ、可愛いよ。」


暫く問答が続いた後、レニが諦めたように黙り込んで決着がついた。

「うん、可愛い♪」

「お前………まだ言うのか…
もう、それはいい。」

ガックリと肩を落す姿が可愛くて、また言ってしまいそうになったけど、なんとか胸の中だけで抑えた。


まっすぐレニの顔を見つめてると、ふと以前よりも顔が青白い気がして手を伸ばす。
微かではあるが、以前よりも頬がこけ、顔色が悪くなったような気がする。
そういえば、戻ってきた時に、鏡を見つめて疲れきった表情を浮かべていた。
そこで、レニの顔をこんなにじっくりと見ていなかったことを思い出す。
触れ合えば、求め合うことに夢中になっていた。
魔王の仕事が激務であることを知らない訳ではない。
忙しい職務の合間を縫って、逢いにきてくれるレニを当然のことのように思っていた自分に愕然とする。
最初からムリをさせていたのだと気づいて、胸が締めつけられるように痛くなった。

「どうした?どこか苦しいのか?」

気遣うように向けられる優しい視線が苦しかった。

「ごめんね。」

「どうしたんだ?突然。」

「レニ、顔色よくないから。
疲れてたのに、いつもムリしてたんだよね。
レニが忙しいの知ってたのに、大変なことわかってた筈なのに……全然そのこと気づきもしなかった。」

「別に…疲れては……」

「嘘は嫌。」

レニは言葉を呑んで、眉を落す。
その素振りから、レニがムリをしていたことが有り有りと伝わってきた。
誰よりも傍にいたのに、自分の気持ちばかり優先して、ちっとも気づかなかったことを、今改めて思い知って、自己嫌悪でチクチクと胸が痛む。
一番傍にいたのに、何をしていたのだろう。
押し潰されそうな心の痛みは自然と顔に表れていた。

「そんな顔をしないでくれ。」

悲痛な声がして、上向くと、視界が真っ白に染まった。
私を包む爽やかなレニの匂いと力強い温もりを感じて、抱きしめられていることに気づく。
レニの胸の中に抱かれて、真っ白なシャツごしに心音が私の耳に響いてくる。
何もかもが優しすぎて、涙が零れてきた。

「ふ………っ」

「泣かないでくれ。」

「…ムリ…だよ。
レニが優しすぎるもん。
優しくしないで……でも、放っておかないで…」

「……う~ん。
難しいことを言うな……」

自分でも無茶苦茶だなって思う。
それに、レニを困らせてるってわかっているのに、涙は後から後から零れてくる。
止めなきゃって思えば、思うほど、どんどん溢れてきて、真っ白なシャツに染み込んでいく。

もう、どうしたら、いいんだろう!?

軽くパニックに陥りそうになったところで、真っ白だった視界がレニの顔でいっぱいになった。
涙でぼやける視界の中には、眉尻を下げたレニの顔がある。
泣いている私を前に、普段の冷静さが欠片もなくおろおろとしていた。
何かを伝えようと唇を動かそうとするが、思案しては、口を閉じる。
そして、やっとでてきた台詞は、

「っ……すまない。
どうすれば、泣き止んでくれるか?」

あんまり真剣な眼差しで言うものだから、私の動きはピタリと止まり、変わりにクスリと笑みが零れた。
困り果てた顔が、一瞬驚いて、困惑した表情になる。
今度の困った顔は、さっきみたいな深刻なものじゃなくて、戸惑っている感じだった。

「……からかっているのか…?」
ジットリと見つめる瞳が僅かに訝しがっている。
笑っていい状況じゃないのに、正直なレニの表情がなんだかツボにはまってしまって、笑っている自分を止められなかった。

「ごめんね……そうじゃないないの。」

笑いながらの言葉に説得力ないと思うけど、それだけ言うので精一杯だった。

「なら、いい。
辛い顔をされるより、笑ってくれた方が断然マシだ。」

レニの顔が安心したように緩む。
やっぱり、優しすぎるよ。
じんわり目頭が熱くなる。

「オイ!?また泣くのか!?」

「ふぁ…っ、だって、だって…レニが……」

「あぁ…お願いだから、泣かないでくれ。」

「…っ……ごめんね。ごめんね。」

言葉の代わりにまた抱きしめられる。
きつく抱きしめられて、苦しいのよりも安心感が大きい。
規則正しい心音を聞いていると、心が落ち着いていく。

どのくらいの時間が経ったのだろう。
さっきまで泣いてたのが嘘みたいに心が安定していた。
抱きしめられたまま、上を向くが、レニの顔が陰になって見えない。

「んっっ……レニ……」

苦しげに訴えると、すぐさまレニの腕が緩んだ。

「すまない。」

「ううん、私はもう大丈夫。
それよりもレニの方が心配だよ。」

「俺は別に……」
まっすぐ注がれていた視線が外される。
私だけには嘘をつけないひとだから、すぐにわかってしまう。
逸らしたままの横顔をジッと見つめていると、チラリとこちらを横目で見てくる。
その目とばっちり視線が合った途端、レニは小さく溜息をついて、観念したようにまっすぐ見つめてきた。

「……怒らないか?」

「へっ?」

意外な言葉に目がまんまるになる。
叱られた子どもみたいにばつの悪そうな顔が不思議でならなかった。
私が怒るような理由って何だろう?

「私が怒るような理由なの?」

「場合によっては……。」

「場合による?」

「ああ…」

歯切れが悪い返答が更に疑問をよぶ。
踏ん切りがつかないようで、レニは言い淀んでいた。


「もう、訳がわからないよ!!
 とにかく、ちゃんと話して。」

「……だが、」

「レニ!!」

ピシャリと言い放つと、レニは一つ息を吐いた後、相変わらず歯切れ悪く話し始めた。

「確かに、執務で疲れてはいるが……
そんなのは大したことはなくて……
今、疲れているのは、それ以外の理由があって……

今の状況が辛いと言うか、その……」

レニが洩らした言葉に心臓が一気に凍りついた。
でも、甘えてばかりで何にも役に立てないのだから、レニがそう思っても仕方ない。
決定的にされることを恐れながらも、レニの負担にしかならないのなら、このままでいるわけにはいかない。
すべてはレニに甘えすぎていた自分のせい。
熱くなる目頭をこらえて、震える声で言葉を紡ぐ。

「……私と一緒にいると……疲れる…の?」

泣いちゃダメ。
ただこの言葉だけを何度も何度も胸の中で繰り返した。

「なっ!?違う!!
そうじゃない!!そうじゃなくて……」

肩をガッチリと掴まれて、目の前には必死で否定するレニがいた。
泣いちゃダメって思っていたのに、恐れていたことをしっかりと否定されて嬉しくて涙が溢れそうになる。

「良かった。
 私、レニに甘えてばかりで何もできないから。
 レニの負担にしかならないのなら、もう一緒にいられないって思ったの。」

「お前が俺の負担になるわけがないだろう。
何よりもお前が大事で、いつもお前のことしか考えられないのに。

だから、困っているんだ。
お前と離れていると不安で心労が増える。
執務なんて、お前に逢えないことに比べたら、何でもない。
それにお前が傍にいても満足できない。
お前が傍にいれば、すぐ触れたくなって、抱きたくなる。
今だって、お前のことを抱きたくて仕方ない。
だが、お前が嫌だと言うから無理をして我慢している。」

歯切れの悪かった口調が一変、矢継早に言葉が飛び出してくる。
口を挟むことができず、きょとんとレニがすべてを言い切るのを待った。
都合のいい夢をみているんじゃないかって言うくらい私が想像していたこととは、まったく正反対の内容で、現実味がない。
覚束ない思考で、どう考えたって都合が良すぎる私なりの結論を口にする。

「レニが今辛い理由は、私を抱けないから…?」

「ああ……

軽蔑……したか?」

未だにふわふわ現実と夢の間を彷徨っていた私に、レニは表情をみるみる曇らせ、落ち込んでいくのがわかる。

「う、ううん!!
あのね、あのね、嬉しいよ。
嬉しすぎて、夢じゃないのかなって思っちゃうくらい現実じゃないみたいなの。
今でも、まだ夢じゃないかって疑ってるの。
だって、それくらい嬉しかったの!!」

慌てて返事をした私にレニは安心したような笑みを見せた後、『バカだな。』って囁いてくれた。

夢じゃない。
急速に現実味を帯びてきて、私の表情もふわりと緩む。
いつもの居心地の良い空気が広がる。
幸せを噛みしめながら、レニの温かい胸に顔を寄せて、そっと瞳を閉じた。




「それで…だな。
すまない……そろそろ我慢の限界なんだが……」

パっと顔を上げると疲弊したレニの顔があった。

えーと、それって、そういうことなんだよね。
疲れてるんじゃないのかな?
でも、我慢してるって言ってた。
それで、もっと疲れちゃってるんだよね。
それなら………
でも、本当に体は大丈夫なのかな?


「…アーシェ……」

熱を孕んだ懇願めいた囁きに体が瞬時に反応する。
どんどん私の体が熱をもっていく。
結局、私も望んでるんだ。

伸ばした腕をレニの首に巻きつけ、そっと唇を合わせる。

「いいのか?」

「うん。

でも、いっぱい可愛がって。
いっぱい甘えたいの。」



END
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おはよーございます。PageTopがまん大会???

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梨理

Author:梨理
なんか好き勝手に叫んでます。

ここにある小話は80%以上の確率で未完成ですので注意☆

長い空白を経て生まれ変わりました!!
もう2009年以前には戻れない。

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